28 December, 2010

Exposure鑑賞の後半 - Israel Report 4

2010年12月10〜22日に滞在したテルアビブでのレポート記事その4です。

【イスラエル滞在2日目】注意:まだ二日目ですからね。(苦笑)
Exposure鑑賞の続き。4時の舞台を見たあと、喫茶店のバーカウンターでたまたま振付家のSahar Azimiと隣り合わせて、話す時間があった。今夜彼の作品も上演されるというので9時に見に行くことにする。火曜日にエルサレムでダンスのクラスを教えているから来たらどうかとお誘いを受けた。そのあとテルアビブ在住のダンサー、曽根知さんと近くのレストランでお互いの活動についてやパーソナルな事など。作品をつくるだけじゃなくてプロデュースしたり自分のために環境を用意しようとしている彼女のパワフルな姿勢に今後の活躍を期待。

劇場すぐ横のカフェでGAGA JAPANの鞍掛綾子さんほか、日本人のグループに遭遇。ご飯に混ぜていただく。関係者向けのショーイングがあるというので、一緒に混ざって鑑賞。「ここはイスラエルだから大丈夫」なんだそうで。実際に見れてしまった。

20:30- Studio A
Alice Dor-Cohen『One』
http://www.alicedorcohen.co.il/works/one/

もとBatshevaのダンサーAlice Dor-Cohenの振付による作品。スタジオの左角奥に設置された建築現場の足場にクライミング用の板が側面に取り付けられている。その横に見台(スピーチで使うような)が置かれ白い粉が入った箱が載せられている。作曲者は誰か知らないが、マイケルナイマンみたいな曲。足場はスタジオの左隅から部屋の中程にある入り口の手前まであるが、左角が一番高くて、隣はちょっと低く並ぶ。その一番高いところから動き始めた男性ダンサー1は額を下につける祈りの儀式のようなゆっくりとした動きを繰り返す。別の男性ダンサー2は下の見台のところから粉を両手に付けて、こちらも儀式的な動きをフロアで行う。彼がステージ手前まで来ると3人目の男3が男2と同じルートで動きを繰り返す。彼ら3人がフロアとクライミングの足場を時計回りでぐるぐると回っていきながら徐々に情熱的な質感へと変わっていく。スッテプで見せるようなところはなく、あくまでもこの循環する場と高揚していく身体というのが基調となった作品。きっと照明が入ると作品の世界にもっと引き込まれるだろう。

●サハール・アジミ・ダンスカンパニー『UTF8』

UTF8 CLIP- Tel Aviv, Israel from SAHAR AZIMI DANCE COMPANY on Vimeo.


Cho:Sahar Azimi.入り口で配られたA4のハンドアウト。表にクレジットと短い説明。裏面に2009,2010年の批評がすべて英語で載っていた。裏を読む時間はなかったが、表の説明を先に読めたのは良かった。ステージ後方の壁に並べられた56個の照明の筒体。これらが各シーンの最初に点灯し、どのダンサーがどの位置で踊るのかというのをシンボルと空間コードをつかって示すシステムが組まれているらしい。毎公演ごとにこのLight Boardの決定が変わるため、いつも違ったパフォーマンスになる。ダンサー自身もシーンの順番やどこで踊るかを事前に知らない。全体で50分、8人のダンサーが10×10 m^2の何もないステージで踊り、照明に「コール」されなかったダンサーはステージをぐるりと囲むエリアのどこかでそのシーンを見守る。説明だけで長くなってしまったが、こうした構成法をとっているため作品全体は断片的で、記号的な印象を持つものの、同じゲームを楽しんでいるという感覚がダンサーと観客の間で共有され、その切断を受け入れる気になれ、ある種の持続する統一かんを得る。恐らく説明を読まなかったとしても途中でこのシステムには気がついていたと思う。動きの素材はOhad作品の持つ語法と重なるところが大きいように思え、かなり多様な動作やポーズが混ざって次々に繋ぎ合わされていく。踊り自体は筋肉が喜びそうなものなのにそれらが時間的にも空間的にも構成された枠に流し込まれた作品。スーラの点描画のような精緻な色彩構成を、ミニマルアートなハサミで冷たく切り取ったようなアプローチ。好き嫌い分かれそうだけど、僕は比較的楽しめた。たしかに「ダンサーの組み合わせは流動的でsubject(主題、対象)は変わる」のだが、かなり制度のほうが個性より強い印象があった。次回作にはウィルスとかバグの混入を検討していただけると、もっと生々しい世界観ができるのかも。いやはや力作でした。


11 Sat Dec. 2010, 22:30 Dellal Hall
Kamea Dance Company『SRUL』/ Tami Dance Company『FLASH』


もうひとつの団体サイトはこちら
http://nimrodfreed-tamidance.blogspot.com/

Cho: Tamir Ginz『SRUL』。今年から来ているという日本人ダンサー今在家祐子も出演。白い衣装に身を包んだ人たちが「最後の晩餐」みたく舞台幅いっぱいの長いテーブルに並ぶ。ビルビオラのスローモーションを舞台上で実際にやるとこんな感じか。それぞれのキャラクターが映画のように紡がれる。ただしそれは同時並行に進む群像劇。哀愁を感じさせる音楽のチョイス。舞台前面に落ちて来る砂のカーテン。叙情的でナラティブな動きは音楽と相まって感動を誘う。優雅で気品があって。抜粋しかみられないのが残念だったが、完成度の高いエンターテイメント作品だと思う。

Cho:Nimrod Freed『FLASH』はピアノの生演奏がステージの下手で。大きな布がピアニストによってほどかれると中から男女のダンサーが赤い椅子に座っているのが見える。口や体で出す音を使って踊りのシーンがあって、ピアノに載せてショーダンスがいろいろ。ピアノの音がスピーカーから強く聞こえるってのが残念だったけど、やっぱり生演奏があるっていうのはそれだけでもう身体表現になっているなあと改めて感じた。空間に存在しているだけで強い。ダンスの方はコンテンツがいろいろ集めてある感じで、作品のメッセージはイマイチ伝わってこなかった。。

***

以上、土曜日に僕が見たダンス公演の記録をまとめてみました。それぞれだいたい30-35NIS(シェケル)とかで見られた。だいたい800円ぐらい。会場には日本の評論家の方達などもいらっしゃっていた。乗越たかおさんの取材記事がDANZAに載るようなので日本在住の人はチェックされたし。

さて、この後はGAGA intensiveがいよいよ始まる3日目です。

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