21 May, 2011

学校訪問演奏 MEMO for students with physical disabilities.

2010年の春からStichting Memorable Momentent(通称MEMO)の登録アーティストとして活動している。僕の楽器はメロディカ。ユトレヒトやアムステルダムに続いてハーグでもパイロットプロジェクトが始まり、ハーグで一番最初の訪問演奏をしたのは僕だった。2010-11年度はハーグ音楽院からもワークショップを経た40名ほどの学生が参加している。普段は託児所kinderdagverblijfを中心に行っていて、0歳から4歳の子どもたちに1グループ15分の演奏をするというもの。

アムスの事務所がマネージメントなどは全部してくれて、訪問先と日時とグループ数などをまとめたメールで演奏ブッキングをしてくる。登録アーティストは自分の楽器を持って、約束した会場へそれぞれ出かけて、サインをもらってきて後日事務所に請求するとギャラが事務所から支払われるという仕組み。MEMOの方針として、毎回違うアーティストを派遣するようにしていて、同じ託児所には多くても年に2回程度しか行かないように配分している。

アムスには数人ダンスやパントマイムのアーティストもいるそうだが、ハーグの登録メンバーは全員音楽の学生。ただ僕の場合は踊りや視覚的な要素を入れるようにプログラムをしているので、少々特殊なケース。だいたい最後は子どもたちと一緒に踊って終わるような構成になっている。MEMOのパフォーマンスは全曲暗譜での演奏が求められる。子どもたちとのアイコンタクトはとても大事だし、床に座って演奏とか、ともかく柔軟性が必要な現場という理由もある。

僕が演奏する曲はほぼ自作曲のみ。子どもたちの反応や、先生の盛り上げ方、集中力とか、その時々の状況によって、演奏順を変えたり、曲自体の構成をカットしたり伸ばしたり、その場で即興的に変更し調整していくのは僕の強みでもある。最初から泣いている子が1人ぐらいいるのは日常茶飯事。それでも、そういう子たちも演奏が始まると注意を向けて、笑ったり、うまく行けば手拍子してくれたりするところまで引き込めることもある。そういう瞬間は、こちらも満足感を味わえる。でも、子どもは子ども。泣いている子は、「今は音楽なんか聞く気分じゃない」のである。いちいち気にしていてはいけない。大きくなり社会性を持つようになると、周りに合わせるということを覚えていくが、彼らはまだ正直なのだ。

小学校への訪問演奏というのもある。こちらは5、6歳が対象になっていて、プログラムの進め方が違う。時間が25分と少し長いというだけではなくて、クラスの先生にホスト役になってもらって、音楽番組のように脚本をオランダ語で読んでもらうのだ。登録アーティストにはオランダ語が話せない学生も多いため、この仕組みはとても合理的。解説の合間に演奏を挟んでいくスタイルで、こちらは演奏に集中できる。

途中で楽器の仕組みを解説するコーナーがあったり、子どもたちが楽器の演奏に挑戦するコーナーも入る。インタラクティブ・コーナーでは、僕の場合、曲の変更(演奏スピード早い遅い)に合わせて、踊ってもらっている。こうしたMEMOの大枠に合わせて各アーティストは自分の楽器や専門ジャンルを活かしたパフォーマンスを準備している。

さて、 先日は今年度初めての小学校への訪問演奏があった。この日の訪問先が少々変わっていたので紹介しようと思ってこの記事を書くことにした。出かけたのはDe Piramideという運動能力に障害をもった子どもたちのための学校だった。

事務所からの連絡には
"Please mind that the children have some motoric problems, you can encourage them to dance if necessary, but do not expect a big physical reaction. "
「運動障害がある子どもたちです。必要ならば踊るよう励ましてもいいですが、身体的に大きな反応は期待しないでください。」と書いてあった。


朝8:40から最初のグループが予定されていたんだけど、30分ほど早く到着した。一階建てのピンク色の建物で、なんとも学校らしからぬ雰囲気。先生達の待合室でお茶をいただく。女性の先生ばかりで7人ほど。皆さんもちろんオランダ語で話していたので、僕は全く内容は理解できなかった。で、ぱらぱらと子どもたちが到着し始める。杖をついている子、車いすの子、膝から下がなくて歩いている子。廊下に現れては先生達と教室へ移動する子どもたち。なるほど。なるほど。

両腕に杖を固定した男の子がその部屋の前まできてすってんころりん。思わず、「あっ」と声を上げてしまったが、先生達は至って冷静。「あ、あれぐらいは大丈夫」「あーそうですか」「ほらね」彼はすぐに起き上がって、奥の教室に歩いていった。

普通なら20人ぐらいいるクラスにこの学校は7人ほど。で、みんな補助具を付けていたりして、久しぶりのスクールバージョン(司会入り)だったのに加えて、こちらも始めは緊張してしまいました。2クラスで上演しましたが、どちらのクラスも元気にダンスに挑戦してくれて、子どもによってはかなりはじけて踊っていて、むしろ普通よりも元気なぐらいで驚いてしまいました。

終演後、興味があったので先生に幾つか質問してみました。聞いた先生がそこまで英語が得意というわけじゃなくて、あまり突っ込んだ内容は聞けませんでした。

ここで教えるには普通の教員免許に加えて特別な勉強と資格が必要。こういう学校はハーグでここだけでほとんどの人はハーグ市内からだけど、周辺の街からも来ているそうだ。10代の子たちは道を挟んだ反対側の建物に通っているそう。通常の授業に加えて、フィジオセラピー(理学療法)やマッサージも提供される。車いすや義足などはだいたい生徒が自分で所有しているが、学校でも補助具や車いすなど所有しているそうで、沢山置いてあった。発音の練習などもすると言っていたので、筋肉全体の障害を持った子どももいるのだろう。ただし、視覚聴覚障害や心臓障害などは別の学校があるそうで、ここにはいないと言っていた。

ハーグでここだけというわりには、二クラスだけのよう。ちゃんと学校の数は足りているんだろうか。これ以上専門的な調査はしませんが、オランダの障害児・者教育の現場をかいま見ることになった、貴重な機会となりました。

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